TCFD提言への取り組み
TCFD提言に基づく情報開示
昨今、国内外の農畜産物や水産物は気候変動による影響を受けており、地域の人々に健康的な食の提供を目指す当社にとっても非常に重要な経営リスクの一つとなっております。持続可能な社会へ貢献と成長のため、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、気候変動課題について分析を実施しましたので、情報を開示します。
ガバナンス
当社の取締役会は、当社グループ全体にかかわる事項や経営上の重要事項に関してのスピーディーで戦略的な意思決定と健全で適切なモニタリングの両立のため、原則として毎月一回開催されるほか、必要に応じて臨時取締役会を開催し、法令で定められた事項や経営に関する重要事項について決定するとともに、業務執行状況の報告及び監督しています。気候変動をはじめとしたサステナビリティに関する課題を含めた重要リスクについては、代表取締役社長を委員長としたリスク管理・コンプライアンス委員会を適宜開催し、審議・検討しております。当委員会において討議された事項については月に一度開催される取締役会に報告され、適切に管理・監督されるよう体制を整えております。今後はさらなるコーポレートガバナンスの充実及びサステナビリティの推進に努めてまいります。
戦略
当社では、気候変動によるリスクと機会の特定及び評価を行うため、2023年度のデータをもとにシナリオ分析を行いました。脱炭素へ移行する1.5℃(2℃未満)シナリオと現状のまま地球温暖化が進行する4℃シナリオを想定し、2030年及び2050年の将来世界について定性的に分析を実施しました。
各シナリオの詳細は下記の通りです。
※1【時間軸定義】
短期:0~1年 中期:1~5年 長期:5年以上
※2【影響度定義】
大:外食産業であることから、食材・原材料コストに関わる事項
中:IEA報告書記載の数値などを考慮し、将来世界でコストが増加するもの、および現状影響は見られないが将来世界の市場の動向によって導入を検討する事項
[※2023年度のデータをもとに定性分析を実施]
※3 環境に関する方針はこちら
[ 各シナリオの分析結果 ]
1.5℃(2℃未満)シナリオの分析結果
当社は、全国各地に各種業態の飲食店を展開しており、操業のためにGHG(温室効果ガス)を、2023年度でScope1が4,107t-CO2、Scope2が10,820t-CO2排出しております。今後、炭素税課税や再エネ政策の動きが活発化した場合は、再エネ電力価格の高騰による操業コストの増加や設備投資による対応コストの増加が大きなリスクとして想定されます。一方、機会については、環境配慮商品・サービスの需要が増加した場合、エシカル商品の開発と提供により売上が増加することが想定されます。
4℃シナリオの分析結果
今後、異常気象の激甚化、頻発化により、店舗の営業停止による損失が大きなリスクとして想定されます。また、平均気温の上昇や降水パターンの変化により、原材料となる農作物、畜産物、水産物の品質劣化や収穫・漁獲量の減少により調達コストが増加することも想定されます。一方で、平均気温の上昇により夏季メニューの売上が伸びることが予想され重要な機会として想定されます。
[ リスク低減及び機会獲得に向けての対応 ]
1.5℃(2℃未満)シナリオ
・リスク低減
リスク回避に向けては、炭素税や再エネ・省エネ規制などの強化が想定される脱炭素社会に適応するため、GHG(温室効果ガス)排出量を削減します。店舗照明のLED化や高効率厨房機器など設備の切り替えや整備、再エネ電力メニューへの切り替えや非化石証書の活用を検討しております。プラスチック規制については、すでに持帰り用ビニール袋に再生可能な有機資源由来の物質を原料としたバイオマスプラスチックが25%以上配合されているものを使用しています。今後、より石油由来比率の低いビニール袋や持ち帰りパックの導入を検討いたします。
・機会獲得
機会獲得に向けては、大豆ミートや代替肉などプラントベース食品を利用したメニューの開発を検討します。畜産において飼料の生産や輸送、家畜のゲップからのメタン発生など環境負荷が大きいと懸念されていることから、環境負荷の低い大豆ミートや代替肉が注目されています。当社では廃食用油のリサイクルを実施しております。 「神楽食堂串家物語」「天麩羅 えびのや」など商業施設内店舗においては商業施設が、「まいどおおきに食堂」「麺乃庄 つるまる饂飩」など路面店においては当社が依頼した専門業者が、お客様にお食事を楽しんでいただいた後に出る食用油を、バイオディーゼル燃料や飼料用添加油脂、石鹸原料、堆肥原料等の資源としてリサイクルしております。今後取り組みを推進するにあたって、SAF(Sustainable aviation fuel:持続可能な航空燃料)への転換など、循環型社会により貢献できるような取り組みを行ってまいります。
4℃シナリオ
・リスク低減
異常気象の激甚化や頻発化に対応するため、各店舗において災害対策備品を常備し、防災訓練を実施するなどBCP対策を徹底する他、原材料の分散調達を検討いたします。また、温湿度が上昇すると食品が腐敗しやすくなるため、健康で安全な食を提供する上でも、保管や調理に際して冷蔵・冷凍設備の更新や調理方法の工夫などを検討いたします。
・機会獲得
機会獲得に向けては、猛暑により食欲が減退した時でも楽しんでいただけるようなメニューの開発などを進めてまいります。
リスク管理
当社における全社的なリスク管理は、リスク管理・コンプライアンス委員会を適宜開催することでリスク管理体制を構築しています。気候変動をはじめとしたサステナビリティに関する課題を含めた重要リスクについても、全社的なリスクと同様に当委員会で評価・管理を行っております。また、高度に専門的な検討を要すると思われる案件については外部専門家等から意見を求め、必要に応じて取締役会に報告し、リスク管理・監督機能の強化を図っております。
指標と目標
当社では気候変動によるリスクと機会を管理するための指標を温室効果ガス(GHG)としており、2030年度に2023年度比50%の削減(Scope1+2)を目指しています。2023年(1月~12月)のGHG排出量はScope1で4,107t-CO2、Scope2で10,820t-CO2でした。今後もGHG排出量を継続的にモニタリングするとともに、店舗の使用電力を再生可能エネルギーへ切り替え、廃油リサイクルやバイオマスプラスチックの使用をはじめとした削減活動を強化してまいります。
※Scope2はマーケット基準で算定しております。
※算定の対象範囲は、国内直営店320店舗(2023年時点)としております。
算定範囲については、一部電力使用量などが不明な店舗を除外しております。
今後は全社的な算定の実施に向けて社内体制の整備を検討いたします。